アンチフラジャイルな Zen: 51%攻撃を超えて
Zen は先週末、51%攻撃(二重支払い)の対象となり、犯行に及んだ者は取引所から 23,000 ZEN を盗むことに成功しました。これは決して歓迎されるべき出来事ではありません。一方で、この事件の真相、Zen チームがこれに対処すべく行っていること、ならびに、この事件が今後 ZenCash に及ぼす影響に関して、いくつかの大きな誤解が流布していることも事実です。
攻撃が行われてから 1時間以内に早期警告システムが作動してからは直ちに対策が開始され、夜通しで作業が行われました。これによって、さらなる攻撃は食い止められ、各提携取引所においても対処が行われ、我々のマーケティング部門はコミュニティに対して包括的なアップデート (日本語版記事はこちら)を同日の朝に発表しました。
我々 Zen チームは、プロフェッショナルなチームとして自らの責務を確実に認識し、本件を暗号通貨業界全体を改善するためのきっかけとして捉え、コミュニティの皆様にお約束した内容を実現すべく、アグレッシブに前進していく所存です。
(Crypto Lark との以下のインタビュー動画において私が述べた内容に誤りが含まれていましたので、訂正させていただきます。ビットコインゴールド (BTG) は実際のところ、51%攻撃に対してフォーラムを通じて素早く対応内容を発表しており、攻撃への対策において ZenCash にサポートを提供していました。この点に関して事実と異なる発言をしてしまったことに対し、深くお詫び申し上げます。自らの経験を元に BTG チームが我々に情報を共有してくれていたことに対し、感謝の意を述べたいと思います)
誤解の解消
今回の 51%攻撃に関し、以下の点を確実に認識していただきたく思います:
Let's clarify some things about 51% attacks: 1) Coins aren't created out of thin air so there's no supply dilution, 2) these events are fraud against a specific victim (usually exchanges), and 3) your private keys you hold off exchange are perfectly safe #bitcoin #ZenCash
— Rob Viglione (@robviglione) June 5, 2018
現在 ZenCash が対策として行っていること
我々は今回の様な事態に対して降参し、プロジェクトを停止してしまう様なチームではありません。我々において、そういった発想は一切存在しません。したがって、当然のことながら、こうした事象が ZenCash、ひいては他の暗号通貨プロジェクトに対しても発生することが無いように、現在全力で活動しています。
サトシ・ナカモトが生み出したコンセンサスルールにおいては、今日の暗号通貨業界で見られるような状況に比べ、非中央集権化が進んだ世界が想定されていました。すなわち、マイニングを行うのは全世界に存在する CPU であり、ここにおいて 51%攻撃を成功させることは困難であるのみならず、経済的にも非合理であると考えられていたのです。したがって、ルールに則ってネットワークに参加することこそが最善の選択肢だったのです。
ところが現在においては、そうした状況は見られません。ASICs、さらには潤沢な資金を背景として最適化が施されたマイニングファームといったものに加えて、膨大な費用をかけて自らマイニングファームを設立する必要がなく、Nicehash のようなハッシュレートをレンタルすることのできるサービスを利用することで、一時的にネットワークをハイジャックすることが可能となっているのです。ここにおいて、51%攻撃を試みることは、技術的に可能であると同時に、経済的な観点からも合理的な行動ということができます。もちろん、これが成功する確率はあくまでランダムであって、実質的にはギャンブルであることに変わりはありません。しかし、リーズナブルな頻度における攻撃成功が見込まれる限りは、モラルを知らない人間たちによって攻撃が継続されることでしょう。
実際、二重支払いのメカニズムは明快であり、これは単にハッカーが自ら密かにマイニングを行った一連のブロックたちを一気にブロックチェーンに挿入することで、この一連のブロックたちが「真」のチェーンであると見なされ、その結果として、この偽りのチェーンに追従する形でネットワークがブロックを形成していくこととなるのです。繰り返しますが、ここにおいて不思議な要素は一切存在しません。であるがゆえに、自ら密かにマイニングを行うことを不可能とするための方法を模索することが可能となるのです。
現在検討中の解決策は、以下の3つとなっています:
1) ネットワーク内に複数のチェーンが並行して存在する場合、ハッシュポインタを複数のブロックに向けるようにすること
2) ネットワークに対するブロック情報報告の遅れに対しては、何かしらの罰則が課されるようにすること (これに補足する形で、課された罰則に応じてダイナミックに難易度調整が行われるようにする)
3) ノードシステムを一種の公証サービスとして利用し、現在の PoW コンセンサス上のレイヤーとして、実質上の PoS コンセンサス方式を導入すること
ZenCash の現在の状況
我々のパートナーである取引所の一つにおいて 23,000 ZEN が盗まれてしまったことは非常に残念です。一方 Zen は、プロジェクトとしてこれまでに無いくらい充実しているというのが事実です。約 12,000 のセキュアノードを背景とした暗号通貨業界で 2番目に巨大なネットワークを携え、残り 1ヶ月と少しで、ブロック報酬のうちノードに対する報酬割合が、20% へと引き上げられます。これによって、Zen ネットワークは暗号通貨業界の中でおそらく最大規模のネットワークとなることが予測されます。
さらに、ゲーム理論に基づいた投票システムに関して、すでにプロトタイプが完成しており、7月におけるソフトウェアアップグレードに際してコアプロトコルの重要なアップデートを実行する準備ができています。また、一連の新たなプロダクトの市場発表を目前に控えているのに加えて、サイドチェーンを用いて Zen システムをプラットフォーム化することで、大規模な各種スマートコントラクトシステムに匹敵するシステムを構築するための準備が現在確実に進んでいます。もちろん、我々のパートナーである IOHK と共同開発を進めている革新的なスケーリングソリューションとしての blockDAG プロトコルの開発も忘れてはなりません。
なお、blockDAG プロトコルの実装により、Visa ネットワークに匹敵するトランザクション処理量の実現が期待されており、同時に現存のプロトコルが刷新されることとなります。これによって、「(ビットコインの)クローンからフォークしたコインからフォークしたコイン」という風に我々自身を形容することに終止符を打つことが可能となります。何よりも、これによって Zen の本来の姿 – 最高のチームにより率いられ、熱心に心の底から応援してくれるコミュニティによって支えられた、イノベーションの源 – が実現されることとなるのです。
レジリエントであるのみならず、アンチフラジャイルなシステムとしての Zen
これは机上の空論ではありません。実際、今回の事件に対するチームおよびコミュニティの対応には目を見張るものがありました。しかし、より重要なのは、この経験から我々が多くの事柄を学んだということなのです。同時に、本件をきっかけとして、51%攻撃という脅威を迅速かつ効果的に抹消するべく、我々のエンジニアたちは徹底的にブレインストーミングを行う機会を得ることができました。我々は、この脅威を暗号通貨業界という枠組において取り除くことを、願っているのです。
プロジェクト発足からの1年間、我々は素晴らしい人々の繋がりに恵まれてきました。そして、彼らによって Zen プロジェクトが支えられてきました。我々のパートナー、アドバイザー、あるいは私にとって友人とも呼ぶべき人たちが多数集まって、「しつこいくらいに」(というのはジョークですが) 応援してきてくれました。本当にありがとう!
様々な出来事を経験しながら、Zen プロジェクトも成長を遂げています!
Zen チームは、ネットワークのモニタリングならびに被害にあった取引所との共同捜査を継続して実施しています。この過程で判明した情報に関しては、適切と判断される組織に対して提供していきます。
ZenCash は引き続きユーザーの皆様の資産のセキュリティ保全に取り組んでいきます。なお、セキュリティに関する具体的な疑問がおありの場合は、直接取引所にご連絡ください。Zen チームはまた、タイムリーなカスタマーサービスを提供していくことに努め、本件に関する新たな情報が分かり次第、コミュニティに対してこれをお伝えしていきます。
最新動向に関しては、ZenCash ソーシャルメディアをご確認ください!